身の回りの複雑系

群集事故はなぜ起きた? 対策は?!

群集事故とは

群集事故とは、無秩序な集団によって発生する事故である。雑踏事故、群集雪崩、将棋倒し、ドミノ倒しともいう。

群集事故」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2023年1月26日 (日) 9:13 JST

 

繰り返される群集事故

最近では、韓国の繁華街 イテウォン(梨泰院)で多くの死者が出る事故がありました。日本でも2001年に 明石花火大会歩道橋事故 が発生しました。海外ではサッカーの試合で観客が騒ぎ、群集事故となるケースも起こっています。この他にも、スポーツ観戦やコンサート会場でファンが押し合いになって、死傷者が出る事故などが世界中で報告されています。

なぜ、このような恐ろしい事故が繰り返されるのでしょうか。

明石花火大会歩道橋事故の事故調査報告書によると、会場に向かう人と帰宅する人の流れがぶつかり合い、歩道橋の狭い空間で群集なだれが発生したことが原因でした。人々は楽しく過ごすために期待して出掛けた先で、歩道橋に閉じ込められ圧迫されるとは誰も思っていません。

人が多く集まると想定される場合は、その会場周辺だけを考えるのではなく、人々がそこへ向かう導線など広範囲において事前に警備体制を協議する必要があります。こんなにたくさん人が集まるとは思っていなかったと後悔しても、その時起きた事故をなかったことにはできません。十分な予測、事前の検討と準備が重要となります。

 

人流をシミュレーションする

歩行者個々の行動を厳密に再現することは難しいですが、群集のような大勢の人の行動は、典型的な行動パターンと周辺環境をモデル化することで再現することができます。

また、群衆の行動は多数の人がそれぞれの意思に基づいて行動した結果として形成されるもので、そこには個々の行動の足し合わせだけでは起きえないような、押し合いや圧力の連鎖といったことが起こります。こういった個々の人間の相互作用の積み重なりをシミュレーションすることもできます。

例えば、高層ビルや大型商業施設からの避難を考えてみましょう。
このような施設からは、有事の際、多数の人が一斉に避難を行い、群衆事故が発生する可能性があります。安全に避難し事故を防ぐために、避難訓練は重要です。しかし、実際に大勢のお客様を集めての避難訓練を行うことはとても難しいです。

コンピュータを利用して仮想実験を行うことで、各種施策(避難経路の確認、密集する通路・エリアの特定、要支援者への対応 等)を評価することができます。

 

 

人流・交通流コンサルティング ホームページでは、さまざまな事例を紹介しています。】


どういう条件が揃うと事故が発生しやすいか、どういう対策を取ると効果があるかを知ることができれば、事故を未然に防ぐことができます。
現状を少しでも改善するために、シミュレーションが役に立てられればよいなと思います。

 

身近でもさまざまなところで対策

年始めに何ヵ所か神社へ初詣に行きました。

一つは、参道が長く、まっすぐな参道を少しずつ進み、いつ本堂に到達するか分からずでしたが、お詣りまでに1時間少々かかりました。横に6人ほどで並行して歩いて進みましたが、皆さんゆったりと前が進むと少し歩くという感じでした。これは「セルオートマトンモデル  *」に似ているかもしれません。途中には警備の方がいて、並んでいる人に混乱が起こらないよう誘導していました。聞けば教えてくれたかもしれませんが、どのくらい時間がかかるか分かったらよかったなとは思いました。

*格子状のセルと単純なルールによって、複雑な自然現象を再現するモデル 

もう一つは年明け10日程経ってから行きました。
鳥居をくぐってから本堂まで徒歩10分程あり、参道の幅は10m以上あるようです。
並ぶようなことはなく、本堂まですんなりと進めました。帰り道はこれからお詣りに行く人と重ならないように、来た時と違う門へ道案内がされており、混雑は感じず厳かな気持ちでお詣りすることができました。


このように多くの人が集まると想定される場所は、よく見ると事故が起こらないように対策がされているようです。十分な予測、事前の検討と準備、当日の運営がとても大事であると感じました。

エスカレーターは歩かないで と同じように、落ち着いてゆとりをもった行動をしていれば事故は起きづらいとも感じました。

群集事故をいろいろ調べていると人混みが怖くなりましたが、人の集まる空間は「賑わい・楽しく・安全」であるのが本来の場であるはずです。人々が集う場所は、私たちの暮らしにとって大事なものではないでしょうか。

 

<参考情報>