MASのモデル

新商品普及モデル

公開日:2025/4/15

 エージェントベースの新商品普及モデルを作成しました。

 なおこのモデルは現実を単純化して表現したものであり、新商品の普及を予測するものではまったくないことにご注意ください。

 このモデルを通して、消費者の購買行動に対する理解を深めていただけますと幸いです。また、余力のある方はぜひモデルを発展させて自分なりの分析を加えてみてください。

 

 

モデルの概要

 消費者はイノベーター理論に基づく5つのタイプのうち、次の3つのタイプについてモデル化しています。

・イノベーター:商品の「新しさ」に価値を感じ、商品を認知したら必ず購入する人
・アーリーアダプター:商品の「購入によるメリット」に価値を感じ、広告や口コミから商品の情報を集めて購入判断をする人。
・アーリーマジョリティ:商品の「流行度合い」と「購入によるメリット」に価値を感じ、広告や口コミからの商品の情報と流行度合いを併せて購入判断をする人。

 消費者が商品を購入するステップを以下に示します。

 1. 商品に興味を持つ
  ・広告、口コミを通して商品への興味が増加する。
  ・商品への興味は時間とともに減衰する。

 2. 商品の流行度を確認(アーリーマジョリティのみ)
  ・商品が既にある程度の消費者に購入されていること(全消費者における購入割合)を確認する。
  ・流行度の確認のため、現在から過去一定期間内での購入割合を確認する(古すぎる情報を無視する)。

 3. 商品を購入
  ・商品に対する興味の大きさに応じて確率的に購入する。

 

フローチャート(消費者が製品を購入するまで)

 以下のステップを繰り返すことで、商品が普及する様子をシミュレーションします。

 

フローチャート(製品の購入判断ステップ)

商品の購入確率

 消費者iの商品への興味の大きさに応じて購入を決定するモデル。
 商品の情報を口コミまたは広告経由で受け取り、受け取った情報(興味)の大きさを購入確率として購入判断を行う。

 情報伝達のタイミング
  広告:広告を実施したステップ
  口コミ:購入したステップの1ステップ後(シミュレーションの都合上)

 情報(興味)の扱い
  各ステップで受け取った情報は商品への興味として加算され、時間とともに減衰していく

 購入確率関数

消費者の商品への興味

 リンク先の人が購入後に口コミする。購入回数は1回のみ。

 ※広告、口コミを受けたステップで興味(購入確率)が増加する。その次のステップからは徐々に減衰していく。

 ※より短期間で多くの情報を受け取った方が、その後のステップで購入する確率が上がる。

シミュレーション:計算条件

 エージェントについての計算条件(新商品は1つ、耐久消費財・クルマ等を想定)

  • 購入者をカウントする期間: ※アーリーマジョリティが任意の期間内に購入した数を知る
    • 設定された期間内での購入者数をカウントし、購入閾値との比較
  • 購入閾値:0.0(イノベーター、アーリーアダプター)、0.15(アーリーマジョリティ) ※上記の値の何割以上で購入するか?
    • 全エージェントにしめる購入者の割合
  • 広告の影響の大きさ:1.0(イノベーター)、0.3(アーリーアダプター)、0.03(アーリーマジョリティ)
    • 一度の広告で増加する購入確率の大きさ ※1.0のときは100%買う
  • 口コミの影響の大きさ:1.0(イノベーター)、0.1(アーリーアダプター)、0.07(アーリーマジョリティ)
    • 一度の口コミで増加する購入確率の大きさ ※1.0のときは100%買う
  • 広告の影響の減衰速さ:0.1(イノベーター、アーリーアダプター)、0.3(アーリーマジョリティ)
    • 広告によって購入確率が時間減衰する速さ ※値が大きい方が減衰が速い
  • 口コミの影響の減衰速さ:0.1(イノベーター、アーリーアダプター)、0.3(アーリーマジョリティ)
    • 口コミによって購入確率が時間減衰する速さ

シミュレーション:実行

 結果1:シミュレーション開始時に1回のみ広告


  結果2:5ステップに1回広告

 結果3:毎ステップ広告

 

新商品普及モデル 基本情報

【モデルタイトル】:新商品普及モデル artisoc Cloud
【モデル考案者】:井出恕也、土井厚志、西岡美都
【モデル発表年】:2025