MASのモデル

アクセルロッドの文化変容(文化の流布)モデル

アクセルロッドの文化変容モデルとは

1997年にアメリカの政治学者であるロバート・アクセルロッドが発表した文化の広がりを再現できるモデルです。 このモデルは従来の文化変容モデルとは異なり、文化を「言語」、「宗教」、「技術」、「衣服のスタイル」など複数の属性の組み合わせで表現できるものとしています。 そして、ある社会に文化的に様々な共同体(村や国)が共存していて、隣接する共同体と文化が似ている割合に応じて、自身の共同体の文化と隣接する共同体の文化が似てくることで、文化変容(文化の流布)していく様を表現しています。

 

モデルにおける文化の表現

 文化を「言語」、「宗教」、「技術」、「衣服のスタイル」など複数の属性の組み合わせであることを、アルファベットの並びで表現します。図の例では、「CBADE」や「BAEDD」がそれにあたります。

 例えば、1文字目を「言語」という属性と考えた場合は文字の種類は「C:スペイン語」,「B:英語」などの言語の種類で表現されます。同様に2文字目を「宗教」という属性と考えた場合は文字の種類を「B:イスラム教」,「A:キリスト教」といった宗教の種類で表現されることを意味します。以降の文字も同様に、文化を構成する属性として考えます。  2つの共同体のこの文字の並びを比較したとき、例えば2文字目が同じ文字だった場合、2文字目に該当する属性については同じ文化を共有していることを意味します。同じ文字が多ければ多いほど、似たような文化であることを意味しており、すべて違う文字の場合はまったく異なる文化であることを意味します。

 

 

モデルのルール

 2つの共同体がそれぞれ「CBADE」や「BAEDD」の文字の並びを持っていた場合、両者は、4文字目の文字(「D」)(例えば、「衣服のスタイル」という属性で、「D:洋服」としましょう)が共通しているので、文化の一部(5つの属性のうち1つの属性が共通であるため1/5の文化)を共有していることとなります。

そして、以下の2つのステップを何度も繰り返します。 

①全体から共同体をランダムに1箇所選び、それと隣接する共同体を1箇所を選びます。

②文化が似ている割合と等しい確率(例では1/5)で、選択した共同体とその隣接する共同体の間で文化の属性(文字の場所)を1つランダムで選び、選んだ共同体の文化の1つ(文字)を、隣接共同体の文化(文字)に変更します。

 

 

モデルの見どころ

 上記ルールにもとづいて繰り返し実験をおこなってみます。分かりやすくするために同じ文化(文字の並び)を持つ共同体は同じ色で表現します。 すると、ステップが進むにしたがって共同体の色(文化)が変化していく様子が確認できます。 ちなみに色(文化)が変わる共同体は、異なる色(文化)に接している共同体ということがわかります。 そして、これらの変化を全体として見てみると、文化がまとまったり、分裂したりすることを周期的に繰り返しています。

 例えば、一回の実験のなかでも、はじめはバラバラの文化の集合であった共同体が(図中①参照)、ステップが進むにつれて隣接する共同体同士の文化が似てきていくつかの文化にまとまっていく(図中②参照)ことが確認できると思います。

 さらにステップを進めていくと、まとまりつつあった文化も他の文化と隣接する共同体が変化していき、他の文化にそのまま浸食されたり隣接する共同体と文化の一部を交換することで新しい文化が発生したりして、文化が分裂していく様子も確認できます(図中③参照)。 そして最終的には、どの共同体も文化が変化しない状態に落ち着きます(図中④参照)。

 

 

文化を複雑にした場合にはどうなる?

 また、同じ実験をいくつか繰り返すと、最終的にいくつかの文化が残る場合と1つしか残らない場合が出てきます。 では、文化の複雑さ(文化の長さ(文字の並びの数)や種類の数(文字の種類))を変えてみると、ステップを繰り返した結果、最終的に残る文化の数はどのように変化するでしょうか?

 

 

 直感的には、文化に多様性が(文化が複雑で)あればあるほど、最終的に残る文化の数は多くなるだろうと考えます。しかしながら、アクセルロッドの実験結果はすこし違います。 今回は、サンプルモデルを使いアクセルロッドの実験と同じ条件で確かめてみました。その結果、サンプルモデルでもアクセルロッドの実験と同じ傾向を示しました。

 

・文化の長さを変えてみるとどうなるの?
 文化の長さ(文字の並びの数)が長くなれば、最終的に文化の数が少なくなっていく傾向にあります(上の直感には、合いませんね)。

・文化の種類の数を変えてみるとどうなるの?
 文化の種類(文字の種類)の数が増えれば、最終的に残る文化の数は多くなっていく傾向にあります(こちらは、上の直感に合いますね)。

 

空間が広くなると文化はどのようにひろがるか?

空間を広く(共同体の数を多く)した場合、最終的に残る文化の数はどのようになるでしょうか? 直感的には、空間を広く(共同体を多く)すればするほど、最終的に残る文化の数は多くなるだろうと思えます。しかしながら、アクセルロッドの実験結果では異なります。 サンプルモデルを使ってアクセルロッドの実験と同じ条件で確かめてみたところ、アクセルロッドの実験結果と同じ傾向を示しました。

・マップを広くするとどうなるの?
 中ぐらいの広さのときは残っている文化の数は多いけど、より広いマップになると少なくなります(上の直感には、合いませんね)。


空間の大きさを変化させて、空間の大きさと最終的に残る文化の数の関係を見てみましょう。

 

もっと読むなら

Axelrod, R.: The Complexity of Cooperation: Agent-based Models of Competition and Collaboration, (Princeton University Press, 1997)[ロバート・アクセルロッド:寺野隆雄監訳『対立と協調の科学――エージェント・ベース・モデルによる複雑系の解明』(ダイヤモンド社, 2003年)]
Axelrod, R.: The Dissemination of Culture: A Model with Local Convergence and Global Polarization. J. Conflict Res. 41, 203-226.
【キーワード】:文化変容,文化の流布,ロバート・アクセルロッド,マルチエージェント・シミュレーション,モデル

 

(株)構造計画研究所 坂平文博 2016年8月28日

 

アクセルロッドの文化変容モデル 基本情報

【モデルタイトル】:適応的文化モデル(Adaptive Culture Model) artisoc Cloud artisoc4
【モデル考案者】:Robert Axelrod
【モデル発表年】:1997
【artisocサンプルモデル作成】:構造計画研究所 坂平文博、森俊勝
【artisocサンプルモデル作成日】:2016年6月20日