19世紀ヨーロッパの勢力均衡システム

 

東京大学大学院情報学環 山本 和也

 

 

 本発表でのモデルは、1970年代後半から国際政治学で改良・発展が行われてきたリアリズムの世界における国家間の勢力均衡状況をモデル化したシミュレーションのさらなる改良である。本発表では、このモデルの現在までの到達点である「檀野・田中モデル」とそのABS版でサンプルモデルとして公開されている「勢力均衡モデル」をたたき台にしている。

 発表の概要は、次の通りである。

ABS版「勢力均衡モデル」は、ABSのリリースと同時に、すでにサンプルとして公開されていたが、オリジナルモデルである「檀野・田中モデル」のルールのうち、いくつかを省略したモデルであった。今回のコンペティションでは、第一に、省略されたルールを追加し、「檀野・田中モデル」を限りなく完全な再現したモデル(すでにサンプルルールとして公開[「勢力均衡モデル2」])を示す。

 第二に、公開されているさまざまなABSサンプルモデルでは、いまのところ、使用されてないが、ABSの利用可能性を考えるにあたって、重要と思われる機能であるファイル処理機能と外部プログラム実行機能を「勢力均衡モデル2」に追加した。具体的には、シミュレーションの過程を一つの国際システムの歴史として捉え、その過程を記述した「物語」をテキストファイルに出力するものである。

 第三に、社会科学の研究という目的からすれば重要となる実証性をモデルに持たせるために、19世紀のヨーロッパ世界をABSの画面に再現する試みを行った。今回の実証への試みは、単に19世紀ヨーロッパの地理的な位置関係をモデル化しただけであり、山や川などの自然の形状、国力データに基づいた19世紀国家間の実際のパワー配分といったものまでは組み込んでいないが、それでもヨーロッパの地理的位置関係の特殊性が勢力均衡の作用にどのような影響を与えるのかをある程度みることができる点で、従来の勢力均衡モデルよりもより実証的なものとなっている。本発表では、従来の「檀野・田中モデル」(「勢力均衡モデル2」)とヨーロッパ版「勢力均衡モデル2」を比較し、地理的形状が勢力均衡システムにどのような影響を与えるかをみてみたい。

 

 

 

 

 

論文のダウンロード(PDF書類、294KB)

モデルファイルのダウンロード