ABSにおけるどろけいモデル」アブストラクト

東京大学経済学部4年 稲水伸行

東京大学教養学部4年 上野貴弘

東京大学教養学部4年 西直史 

 

テキスト ボックス: 図 どろけいモデル実行画面
 
 参加者が泥棒と警察に分かれ、警察は泥棒を追いかけ、泥棒は警察から逃げつつ、刑務所に捕まった泥棒を助けるという日本で古くから遊ばれている「どろけい」(けいどろ)ABSでモデル化する。警察には泥棒を探して捕まえるという動作しかないのに対し、泥棒には警察から逃げるという動作と捕まった泥棒を助けるため、刑務所に向かうという2つの動作があるため、まず、鬼エージェントが逃げ手エージェントを追いかけ、逃げ手エージェントはひたすら逃げるだけという「鬼ごっこ」モデルを構築した。そして鬼エージェントを警察エージェント、逃げ手エージェントを泥棒エージェントとし、捕まっていない泥棒エージェントに毎ステップの始め、ある一定確率(勇敢度)で勇敢な泥棒になるという判定を行わせ、勇敢な泥棒になった泥棒エージェントには刑務所まで到達するか、警察に捕まるまでひたすら刑務所に最短距離で向かうという行動をさせることで、「単純どろけい」モデルを完成させた。

 次にこの単純どろけいモデルを現実に行われるどろけいに近づけるため、マップの隅々に木を配置し、泥棒が隠れることができるようにし、警察と泥棒にはそれぞれ異なる行動ルールをもついくつかのエージェントを用意した。まず警察であるが、「単純どろけい」モデルにおける警察と同じ基本警察エージェントに加え、勇敢な泥棒を優先して捕まえる迎撃警察エージェント、泥棒を積極的に捕まえることより、刑務所を守ることを優先させた防衛警察エージェントの合計3種類のエージェントを設計した。一方泥棒は「単純どろけい」モデルにおける泥棒と同じ猪突猛進な泥

棒エージェント(勇敢になった泥棒は警察が周囲にいるかいないかに関わらず、ただひたすら刑務所に向かうため、このように命名)に加え、勇敢になって刑務所に向かっている時でも近くに警察がいる時は警察から逃げることを優先する慎重な泥棒エージェント、できるだけ他の泥棒から離れて行動するバラバラ行動泥棒エージェントの合計3種類のエージェントを設計した。また、泥棒に関しては3エージェント共通のルールとして、自分の周りのある一定範囲に泥棒がある一定数以上いる場合にはその泥棒全員が勇敢になって一斉に刑務所に攻撃をしかける「連携攻撃」という戦略を加え、自分が木の近くにいて警察に追いかけられている時には木陰に隠れ、警察がある程度離れて行くか、近づいてきたら木陰から出て逃げるという戦略も追加した()

 そしていくつかのエージェントの組み合わせで対戦を行ったところ、木陰に隠れることができるため、勇敢度が高いとせっかく木陰に隠れても自分から外にでてしまい、警察に捕まってしまうので勇敢度が低いほうが結果的に長くどろけいが続くということが分かった。またどの泥棒に対しても、警察は防衛エージェントが加わっているほうがかなり早く泥棒を捕まえることができることが分かった。迎撃警察に関しては基本警察よりも強くなる傾向があるが、特定のタイプの泥棒に対して特に弱くなる弱点がある。

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