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シンクロの秘密
シンクロするのはむずかしい!
最近、シンクロナイズド・スイミングがアーティスティック・スイミングに呼び方が変わったようです。その理由は、<ソロ(一人だけ)のシンクロって何よ?>という問いかけがきっかけだったとか。

シンクロナイズ(略してシンクロ)とは、同期するという意味で、要するに、大勢が一糸乱れぬ動きをするとか、他の人の動きに自分の動きを合わせるとかいうことです。 したがって、一人だけのスイマーはいったい誰に合わせるの?という疑問だったのです。ソロのシンクロナイズド・スイミングというのは語義矛盾なのでは、ということですね。

国際大会などでの競技(演技?)を観ていると、華麗ですが、練習はとてもきついのだそうです。 そうでしょうね。このシンクロすることのむずかしさを知りたければ「ウォーターボーイズ」を観てみましょう。 有名な(有名になる)役者が何人も出てきますが、玉木宏もモジャモジャ頭で(途中まで)出演しています。 実写版で彼が主人公の千秋真一を演じた「のだめカンタービレ」に登場するティンパニスト真澄ちゃんのような髪型です。 「ウォーターボーイズ」では、ボーイではありませんが、ヒロイン役(?)の平山あやも良かったです。



泳ぎをシンクロさせるのはとてもむずかしいですが、歌をシンクロさせるのはもう少しやさしいですよね。 合唱(コーラス)も、音曲のシンクロと言えるでしょう。こちらは「ウォーターボーイズ」ではなく「ジャージーボーイズ」を観てみましょう。 もともとミュージカルですが、クリント・イーストウッド(あのクリント・イーストウッドです!)の監督で映画化されています。 運が良ければ、日本人役者による舞台も観ることができますよ。<フォーシーズンズ>という音楽グループの伝記で、1960年代の話ですが、今でも歌い継がれている曲もあります。

「ウォーターボーイズ」の流れで音楽に向かえば、「ジャージーボーイズ」より「スウィングガールズ」の方が良く知られているかも。 こちらは、歌ではなく演奏のシンクロがテーマです。ビッグバンドによるスウィングジャズを演奏するために、まずは楽器の音出しから始めますが、人に聴かせるにはシンクロしなくてはなりません。 <のだめ>を演じることになる上野樹里の出世作です。この2本の映画は、どちらも矢口史靖の脚本・監督によるものです。 そして、どちらにも竹中直人が出演しています。

大人数の合唱になると、指揮者が必要です。オーケストラの演奏でも指揮者が指揮台にたつのが普通です。こうしたことは、やはりシンクロの難しさを表しているのでしょう。

自然にシンクロする不思議
水泳や音楽のシンクロは、シンクロさせようとしてシンクロするわけですが、自然に(勝手に、意図せずに)シンクロしてしまうという不思議な現象が昔からたくさん報告されています。

近年の有名な現象として、2000年にイギリスのロンドンで起きた、<ミレニアム橋>の横揺れ、という事例があります。開通初日に大勢の人が渡っていると、橋が左右に揺れだしたという現象です。 ひとりひとりの歩行には、ほんのわずか左右方向の力があるそうで、それが積もり積もって、橋がわずかに揺れ始めると、その動きを強めるように、人々の歩き方が作用したことが分かりました。 結局、そのような力を相殺するダンパーを取り付けて、再び使えるようにしたのだそうです。

もっと身近なシンクロ現象としては、サッカー・スタジアムで起こる観客たちのウェーブがあります。 ひとりひとりは立ったり座ったりしているだけですが、全体として、横に伝わる波(ウェーブ)のように見えるわけです。 左右の隣の席にいる観客との<規則正しいズレ>が波を引き起こしているのですね。 もっとも、最近はあまりやられていないような印象を受けますが。 また、コンサートで曲の演奏が終わると始まる拍手もシンクロする傾向があるそうです。

人間だと、誰かの指示・指揮にしたがってシンクロさせたり、そうではなくとも、シンクロさせようとするなんらかの意図が働いていたりするのかも知れません。 しかし、上で触れた<ミレニアム橋>の事例では、ひとびとの歩き方のシンクロにはそうした意図のようなものはありませんでした。

ヒト以外の生き物でも、そのような意図がなくても自然にシンクロすることが起こります。 たとえば、鳥の群れです。 こちらは、 身の回りの複雑系<群れながら飛ぶ鳥>、 MASのモデル<ボイドモデル>、 MASの教材<飛ぶ鳥モデルからボイドモデルへ> で詳しく紹介しています。 鳥の群れだけでなく、魚の群れ(魚群)でも、こうしたシンクロが見られます。 たくさんの鳥や魚が、大きな塊になって、一斉に同じ方向に飛び(泳ぎ)、そして同時(瞬時)に向きを変えたりします。

また、ホタルの仲間にも、周囲のホタルと光り方を合わせる結果として、大きな群れの光り方がみごとにシンクロするものがいます。 ホタルは一匹ごとに周期的に明滅しますが、多数のホタルが一カ所に集まると、明滅の周期がシンクロするようになるのです。 これは、個々のホタルはそばにいるホタルと明滅を合わせようとする性質をもっているからだそうです。 こちらは、 MASのモデル<ホタルの光モデル>、 MASの教材<ホタルの光> で詳しく紹介しています。

光るタイプのホタルは、オスもメスも光るのですが、シンクロして光るのはオスで、同じ種類のメスの関心を惹くためだそうです。 しかし、一斉に光ると個々のオスへの関心は分散して低くなってしまうように思えるのですが。

自然にシンクロする仕組み
それでは、自然にシンクロしてしまうのは、いったいどうしてなのでしょうか? シンクロする現象は昔から知られていましたが、その仕組みが数理的に(つまり抽象的・一般的に)明らかにされたのは20世紀の後半でした。 そのくらい、不思議な(複雑な仕組みの)現象なわけですね。仕組みがあきらかになったのは、<非線形数理モデル>という現象の捉え方が発達したおかげでした。

数理モデルでは、互いに相互作用してシンクロする個々のホタルに対応するユニットを<結合振動子>と呼びます。 振動するのは、ホタルの場合は明るさ(光ったり消えたり)ですが、一般的には、物体の上下運動や回転運動だったり、神経の興奮だったり、さまざまな現象に対応しています。

ここではシンクロしていく過程を、数式ではなく、イメージ的に説明してみましょう。 1カ所(たとえば1本の木)でたくさんのホタルが明滅しています。はじめのうちは、乱雑(ランダム)に明滅しているので、バラバラにしか見えません。 ところで、ホタルは近くにいる仲間の明滅のパターンに引き寄せられていく性質を持っています。 そのために、近隣にいるホタルどうしは、同じような周期で明滅するようになります。 やがて、大きな塊で明滅するようになり、同時に明滅したり、明滅が波のように移っていったり、全体としてあるパターンを示すようになるのです。 そうなると、クリスマスツリーの飾りの点滅と見紛うばかりです。 ( MASのモデル<ホタルの光モデル>、 MASの教材<ホタルの光> を参照)

要するに、シンクロの仕組みは次のようなものです。 <乱雑(ランダム、バラバラ)→近隣どうしの相互作用が生じる→仲間どうしのシンクロが始まる→全体が大きなパターンを示すようになる> 結局、無秩序から秩序が生まれる仕組みが、近隣どうしの相互作用だけでよい場合があることが分かったのです。

シンクロに限らず、無秩序な状態から、自然に(ひとりでに、勝手に、無意識に、意図せずに、指図しなくても、etc.)秩序が生まれてくる現象のことを、 <創発>とか<自己組織化>と呼び慣わすようになり、こうした仕組みが組み込まれているモノやコトを<複雑系>と一般的に呼ぶようになりました。

ちなみに、シンクロのような現象を数学的に表現して全体の特徴を明らかにするには、非線形系を取り扱う高度なテクニックが必要ですが、MASだと素直に表現することができ、さらに全体の特徴が自然に現れてきます。 <身の回りの複雑系>にまとめられている事例のモデルが<MASのモデル>になっているのは、このような理由が背景にあるからです。



身の回りの複雑系 MASとは MASのモデル MASツール


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